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プラセボ効果~記憶あんしん外来担当医より~

認知症に伴う興奮や妄想に対して、抑肝散という漢方薬が有効であることが分かっています。従来から用いられている抗精神病薬はもちろん有効性が高いのですが、ふらつき、転倒など身体的副作用のリスクもあって、両刃の剣の側面があります。抑肝散は過剰な鎮静の副作用が少ないので、私たちのクリニックでもしばしば治療に用いています。
漢方薬と言えば、これまでの私自身の先入観では、何となく補助的治療の位置づけであり、あまりその有効性について重要視しておりませんでした。しかし今では、抑肝散の使用頻度は非常に高く、しかもひそかに自慢しているのは、私の実診療において抑肝散の奏効率も非常に高いということです。寝る前に1包、もしくは夕食前と寝る前の1日2包だけでも、高ぶった興奮がおさまったり、夜安定して眠られるようになったりします。漢方薬を併用して使いこなすことで診療の幅が広がってきました。
そんな薬物療法の奏効率を高めるために私は、「プラセボ効果」を最大限活かすように心がけています。

プラセボとは、偽物のお薬のことです。偽物のお薬でも、これを飲んだら病気が治ると思って内服を続けていると、実際に病気が治ってしまうことがある普遍的な働きをプラセボ効果といいます。つまり、自己暗示によっても病気を治す自己治癒力を高めることができるのです。
新しいお薬の効果を評価する臨床治験では、このプラセボ効果の影響を最小限に抑えるために、二重盲検法といって、わざわざ本物のお薬とプラセボと見分けがつかないようにして2つのグループに振り分けて、先入観の自己暗示が働かないように配慮します。それほどに、このお薬は本物だ、効くんだと信じる思い入れが薬効を高めてくれるのであり、どうせ効かないと思いながら飲むお薬はせっかくの効果を減じてしまうのです。
ことほどさように、臨床治験では細心の注意を払って回避されるプラセボ効果ですが、実際の診療においては、これほどの効果を活かさなければもったいないというものです。せっかくお薬を使うのならば、どのように効くのか分からないがとにかく処方されたとおりに飲んでおくという盲目的な姿勢ではなく、お薬の効果を理解して今の症状のどこにどのように作用するのか知ることで、効果を期待する最大限の自己暗示を働かせることができるのです。認知症とともに生きるご本人だけでなく、周囲でサポートする介護者にとっても、期待されるお薬の効果を十分に理解してその効果を実感することで、日々の生活において病状をコントロールするための大事な手段として使いこなすことができるのです。
そんな薬物療法の思い入れを一度の診療で全て伝えることはできませんが、例えば抑肝散を用いるのであれば、お薬を使いこなすための思惑、期待する効果を次のように伝えることを心がけています。

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抑肝散の「肝」 とは、いわゆる肝臓と同義ではなく、 東洋医学によれば「怒りの臓器」と言われるそうで、肝の高ぶりを抑えるということは、イライラしたり興奮するのを抑え、夜も気の高ぶりを防いで眠りやすくしてくれるということです。元々は小さな子供の疳の虫に処方されるお薬であり、体力が低下した高齢者でも相性が良い印象です。
漢方薬はゆっくり時間をかけて体質を変えるお薬であり、即効性はないと考えている人が多いかも知れませんが、 抑肝散は比較的すみやかに効果を顕わします。イライラした時に頓服として用いることもあるほどです。相性が合えば服薬後にゆったりした気分になって、眠気を感じます。基本的に漢方薬は毎食前1日3回服薬しますが、まずは寝る前1回だけ、もしくは夕食前と寝る前の2回内服から始めてみましょう。そうして夜ぐっすり眠られるようになれば、昼間活動しやすくなり、昼夜のメリハリがついてきます。メリハリがつけば生活にも気持ちにもゆとりが出てきます。
漢方薬は苦い、まずいと思っているかも知れません。でも実は、効果が期待できる相性が良いお薬であれば、飲み味はそんなに気にならないものなのです。今のあなたに必要なお薬であれば、服薬はきっと苦にならないでしょうし、もし飲んでみてまずいとか合わないなと感じたら、 その時には安定剤など別のお薬への変更を検討すれば良いのです。

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お薬の効き方を知ると、お薬を使いこなして病状をコントロールするイメージが見えてきます。そして、ご本人も介護者も協調して症状に対処することができれば、プラスアルファのプラセボ効果となって薬物療法の後押しをしてくれるかも知れません。

家族支援~記憶あんしん外来担当医より~

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認知症とともに生きる生活において安定を保つためには、お薬の治療も重要ですが、それと同時に、あるいはそれ以上に「生活環境調整」が大事です。安心して安全に暮らせないと、心身が不安定になるのは当然のことであり、ましてやもの忘れがあればなおさらです。

当院では、ご家族が安心して介護できる状況を整えることもまた、大事な環境調整と考えています。

もの盗られ妄想といった周辺症状は、お嫁さんや実の娘など、身近な介護者に向けられることが多いものです。人の世話になるより人の世話して生きてきた達者な人ほど、世話を受けるのが苦手で世話する人に反発するものかも知れません。世話をすればするほど反発されてしまうとしたら、介護する者はたまりません。
介護の中心となるキーパーソンが孤立して一人で抱え込んでしまわないように、介護の環境を整える必要があります。介護保険制度の利用の仕方や、生活支援のための具体的な工夫について、一緒に話し合ってみませんか。

高齢にもなれば体調不良で外出できないこともあるでしょうし、もの忘れを否認したり不安に思って受診を拒否されることもあるかも知れません。そんな時は、ご家族だけでもぜひ受診、相談にご来院下さい。
ご本人が一度受診しておられる場合には、保険診療の一環として、家族相談や支援を行うこともできます。なかなかご本人に受診してもらうことが難しい場合にも、自費診療にはなりますが相談を受け付けておりますので、まずはお電話でご相談下さい。↓

https://goshogatani.sakura.ne.jp/ghc/p1-6.html

国民健康保険被保険者証をお使いの方へ

 ≪国民健康保険被保険者証の更新のお知らせ≫

現在使用されています国民健康保険被保険者証は、今月末(3月末)で有効期限が満了となります。

4月1日からの新しい保険証は、今月中にお手元に郵送されてきますので、4月以降の受診の際にお持ちください。


平成24年4月から‥

●保険証が1人1枚のカードになります。

●色が現在の桃色から藤色に変わります。

認知症薬の使い分け~記憶あんしん外来担当医より~

正確に言えば「アルツハイマー型認知症治療薬」となりますが、 もの忘れに対処するためのお薬の選択肢が増えました。
これまで10余年は「アリセプト」 の独壇場でしたが、昨年、3種類の新薬が相次いで承認され使用されるようになりました。作用機序は同じものでも、それぞれに売りとなるポイントがあります。使用経験が増えることで、それぞれのお薬の特徴が少しずつ見えてきました。
まだまだ経験を積み重ねているところであり、詳しい薬理作用との関連づけができている訳ではありませんので、あくまでも「第一印象」として今の時点での使い分けのポイントを記します。自分たちのケースではどのように使いこなしたらいいか、照らし合わせて参考にしていただけたら幸いです。

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アリセプト
神経伝達物質を壊す分解酵素(コリンエステラーゼ)を抑え込んで神経の情報を伝わりやすくします。長く使い慣れたお薬で、大体特徴もつかんでいたつもりですが、他の新薬との使い分けであらためて長所短所が明らかになってきました。
まず一番の長所は、意欲を高めてくれる働き(賦活、と言います)が強いということです。勢いが弱まった焚き火に火ふき竹で空気を送り込んで燃え上がらせるように、意欲や興味関心を高めることが期待できます。活動量が増えて生活のメリハリを取り戻すと、脳の働きが活発になり注意力が増して、もの忘れを防いでくれるかもしれません。
一方で、賦活が過ぎると生活が空回りしてしまいます。もともと几帳面な人だったりすると、「苦労性」の性分が煽られて気ぜわしくなることがあります。不安、心配、 猜疑心、興奮などマイナス感情をくすぶらせている人の場合、過剰賦活で一気に焚きつけられてしまうかもしれません。また、この手のお薬は消化管の神経にも作用して、胃もたれや食欲不振の副作用を生じることがあります。
アリセプトは、日中の眠気を軽減します。昼間急にぼんやりして夢うつつの状態になるような、症状の動揺性がある人にこのお薬を使うと、劇的に病状が安定することがあります。

レミニール
アリセプトと同じく分解酵素を抑えて働くお薬ですが、神経伝達物質を受け取る受容体の働きも高めて、二重に作用するのが特徴です。受容体を介して、セロトニンなど他の伝達物質の放出も増加するといわれていて、そのためか憂うつな気分を改善する作用があるように感じます。
もの忘れの出始めに、もの忘れを気に病んでくよくよしてうつ状態になることがありますが、そんな人にこのお薬を使うと、いい意味であっけらかんと割り切る気持ちが出てきます。眉間に寄せられていたしわが緩んでくるような表情変化があります。
繰り言ばかり空回りして生活が不活発になると、こころも身体も脳も老け込むのが早くなってしまいそうです。くよくよするより割り切って、楽しみを見つけながら生活できるようになると、心身が活発になってもの忘れを防ぐことにもつながります。賦活作用は他の薬剤と比べて控えめな印象で、場合によっては「物足りない」と感じられるかもしれませんが、「むりやり感」がないので私は好きなお薬です。

リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ
上記2剤と同じく、分解酵素阻害で神経伝達を強化します。アリセプトが1つの酵素を阻害するのに対して、このお薬は2種類をブロックできます。違う会社から違う名前で販売されていますが、内容と用法は同じです。
他のお薬と異なる一番の特徴は、「パッチ」という名前の通り貼り薬という剤型です。飲み込みが悪い人だったり、規則正しい服薬がプレッシャーになって飲みたがらない人の場合、介護する人の服薬介助の労力を軽減してくれます。アリセプトと比べても遜色ないくらい意欲改善の効果が高い手応えで、しかも内服薬と違って薬剤血中濃度の日内変化がほとんどないために、賦活作用のムラがなく空回りが少ないように見えます。消化器症状の副作用もずいぶん抑えられているようです。
弱点は、パッチ剤を貼り付けた部位の「痒み」です。パッチを無理に引っ掻いてはがしてしまうことがないように、背中の皮膚に貼り付けるのですが、特に冬場の乾燥肌には薬剤が直接しみ渡り、刺激となって痒みをともなうことがあります。そんな時には保湿剤をしっかり塗り込んでもらうようにお願いして、介護者が心を込めてスキンケアしてくれることが案外癒しにつながり治療的だったりします。

メマリー
他の3剤と作用するポイントが異なり、興奮性神経伝達の過剰な刺激をおさえることで、神経細胞を保護し、必要なシグナルがノイズにかき消されてしまうのを防ぎます。ノイズキャンセラでヘッドホンの音が聞き取りやすくなるのと同じで、なかなか興味深い作用機序だと思います。働きかたが異なるので、他の認知症薬との併用が認められています。
過剰な興奮を抑える働きがあるため、認知症にともなう暴言、暴力などの攻撃的行動をおさえてくれると考えられます。アリセプトとの併用で、過剰賦活を緩和する補完作用も期待できます。一方で、シグナル伝達効率を高めるという活性化により、注意力の改善や興味関心の広がりが得られるという印象があり、他者への気配りが見られる、会話に参加するなど社会性が向上して喜ばれることがあります。
副作用は、消化器症状よりも眠気やめまいが目立つ傾向があり、服薬を中止せざるを得ない場合もあります。また、もともと症状の動揺性が目立つ人の場合、テンションが上がり波立ちが大きくなりすぎて、興奮、混乱してしまう場合もあります。

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これらの認知症薬のほかにも、過剰な興奮を鎮めるための漢方薬や安定剤、気分を支える抗うつ薬や夜間ぐっすり眠るための睡眠導入剤などを併用して、症状や生活状況に合わせたお薬の調整を行っています。
お薬を飲んでみてどのような変化が見られたか、情報をフィードバックしていただけると、そこからさらに調整の可能性が広がっていきます。お薬の使いこなしかたについてもぜひご相談下さい。

第6回ふくおか「医療活動功労賞」受賞

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去る平成23年12月13日院長田中耕太郎が、第6回ふくおか「医療活動功労賞」を受賞いたしました。

「福岡市における認知症診療ネットワーク作り」が、福岡県の地域医療確保と質の向上に貢献したとして、財団法人医療・介護・教育研究財団より表彰されました。

 名誉ある賞をいただき、社員一同、これまで以上に皆さまに貢献できますよう鋭意努力する所存です。

私の診療方針~記憶あんしん外来担当医より~

記憶あんしん外来・精神科担当医の佐々木です。
今回は、以前のお知らせの内容と重なる部分もありますが、私が心がけている認知症診療のポイントについてまとめてみました。

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私はもともと精神科医です。
精神科の病気は、うつ病にしても治る病気でもありますが、油断すればぶり返し再発し、慢性的な経過をたどることも多いものです。そもそも慢性の病気に対しては、病気を克服しようという姿勢よりも、病気と折り合いをつけて病気とともに生きるという生活支援の視点が必要です。

一方で私は、12年間研究を続けてきた神経病理医でもあります。
プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病など)やアルツハイマー病の脳の変化を顕微鏡で観察して、病気の成り立ちを調べてきました。高齢者の脳を観察してみると、生前に認知症の症状が全くなかった人の中にも、アルツハイマー病に特有の脳の変化が結構高頻度に存在することを知りました。認知症の病理変化は、年齢を重ねるという加齢現象と同じ延長線上にあるものかも知れません。

昨年から私は、記憶あんしん外来で認知症診療に携わっています。
認知症もまた、慢性の経過をたどって進行し、病気を克服しようとしてもなかなか手ごわい疾患です。成り立ちが「老い」という人生の延長であるならば、闘病してそれを克服するのではなく、人生の一部、生活の一部として受け入れてみるところから始まる治療もあると思うのです。


認知症診療のポイントは、進行予防にあると思います。加齢現象そのものをくい止めることはできませんが、病気にともなう衰えを最小限に防ぐことが大事です。
症状に振り回されて、不機嫌になったり興奮したり落ち込んだり、時には親子喧嘩したり、眉間にしわ寄せて暮らすのではもったいない。病気の進行を抑えるためには薬物療法ももちろん重要ですが、それだけでなく、生活の中に楽しみややりがい、生きがいを見出して安心した生活を送ることが大事です。

予防が大事ということは、病気の治療のためだけに病院を受診するのではなく、病気がこじれないよう新たな病気につながらないよう、元気を保つためにクリニックを利用していただきたいと考えています。

そこで私の診療目標は、患者さんやご家族から、受診のたびに一度は必ず笑顔を引き出して終えることとしています。もちろん、面白おかしい話をして笑いをとるということではなく、笑い飛ばせば困った問題もすべて解消というものでもないのですが、クリニック受診も生活活動のひとつであり、生活の一部であるならば、そこに自然と笑顔がこぼれるようであって欲しいと願っています。


どうぞ元気な姿でクリニックにいらして下さい。

インフルエンザウイルス情報

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 年が明け、寒さ厳しい中、皆さまいかがお過ごしですか。
 今年に入り、まだ少数ではありますが、インフルエンザが流行の兆しを見せています。
 皆さま、予防に是非留意されてください。室内の湿度を保つこと、定期的に換気を行うこと、個人ではうがい、手洗いの励行をお願いします。
 昨年は、オフィス内でお仕事をされている方に流行している印象がありました。室内の湿度を保つには加湿器が言うまでもありませんが、広い空間ですと加湿が十分でないこともあります。時々部屋全体を、スプレーを使用して水を噴霧すると省エネにもなりますし、おすすめです。また数分間、窓を少しの幅開けただけで空気が流れ、換気になりますので、数時間に一度は、換気をしていきましょう。

 また、予防接種※がお済みでない方は、早めの接種をおすすめします。
 
 ※一般;3,600円 65歳以上;1,200円 13歳以下 ;1回目3,600円、2回目2,500円

医療と介護の連携~記憶あんしん外来担当医より~

記憶あんしん外来・精神科担当医の佐々木です。
今年4月から当院での診療をスタートして、もう1年が終わろうとしています。

大学病院・研究室での勤務と比べて大きく変わった今年のテーマは、「連携」でした。
精神科領域ではそもそも慢性の疾患が多く、病気を克服するというより、うまく折り合いをつけていく生活支援が重要です。認知症もまた、年老いていく人生の延長線上にあるとすれば、生活に根ざした支援体制の調整が大事であることは言うまでもありません。
クリニックでの診療は、地域医療同士の連携だけでなく、ケアマネージャーを含む介護や福祉との連携が必要であると実感しました。

↓このホームページでも、介護に携わる方々と連携するための相談票を用意しております。↓
http://goshogatani.com/ghc/p1-8.html
認知症の方々やご家族の生活状況をうかがい知ることができれば、治療にも生活支援にも反映させるチャンスが広がりますので、どうかご活用下さい。

相談票がダウンロードできるようになりました!!

グループトップページより、「相談票」がダウンロードできるようになりました。

★グループトップページ
内科・神経内科・リハビリテーション・在宅医療をご希望の方
「私たちは、ケアマネージャーとの連携を重視しています。」をクリックし、ページ中ほど、「相談票のダウンロード」よりダウンロードしてください。★

当院がかかりつけ医でない方も、日頃認知症介護や医療にお困りの事や相談がありましたら、用紙に記入してFAXをお送りください。医師または看護師が解答欄に記入して返信いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。

お問い合わせ:TEL092-739-8525(担当鷹巣)
       FAX092-739-8521
     

インフルエンザ予防接種開始

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 10月1日より、インフルエンザ予防接種を当院でも受付開始いたします。

 料金は一般の方3,600円、65歳以上の方1,200円(福岡市在住の方)、小児1回目3,600円、2回目2,550円です。
 当院に受診歴がなくても、予防接種のみの受診が可能です。

 今年は例年に比べ、気温低下が急にすすんでいるため、インフルエンザの流行が早くなる可能性があります。

 ご希望の方は、当院にお問い合わせ・ご予約ください。

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